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東照権現様の御朱印
現在、市立郷土資料館(宮町14―2、市民文化会館内)では、企画展「どうなる、富士宮? ─家康が生きた時代をたどる─」を開催中です。展示会では、戦国時代の富士宮について、市内を揺るがした争乱を中心に、様々な資料をもとに紹介しています。今回は、その展示資料の中から二点の古文書を紹介します(いずれも上井出区所蔵、市立郷土資料館寄託)。
1点目は、天正11年(1583)に徳川家康が上井出宿の百姓たちにあてて出した朱印状(朱印を捺した文書(もんじょ))です。ここでは、上井出宿が戦乱に巻き込まれ、伝馬役(公用の旅行者に馬を提供する夫役)を勤める百姓が衰退してしまったと記されています。その対応として、上井出宿の屋敷にかかる棟別諸役(税金など)を免除し、伝馬役をきちんと勤めるようにと指示が出されています。
戦乱により衰退してしまった上井出宿に特権を与え、その復興を目指したものと言えるでしょう。
2点目は、江戸時代の文政元年(1818)、上井出村の村役人が領主である旗本の杉浦氏にあてて出した文書(「乍恐書付以奉願上候」)です。この時、上井出村には御役金(雑費など)の上納が求められていました。そこで上井出村は、「天正年中に東照権現様(家康)から御朱印をいただき、諸役を免除されており、その内容と相違する」と主張します。ここでいう御朱印とは、先に紹介した徳川家康の朱印状のことです。
関連資料がないため、主張が認められたか不明ですが、200年以上の時を経て、家康の朱印状が上井出村の人々の特権を証明する書類として伝えられていたことが分かります。それほど、江戸時代の人々にとって家康に認められた権利は重要なものだったのです。
以上の古文書2点を展示する市立郷土資料館の企画展示は、7月10日までとなっております。古文書の本物を鑑賞できる貴重な機会になりますので、是非、会場までお越しいただければと思います
2023年6月掲載のコラムのため、企画展は終了しております。