市政の運営へ

富士宮市について

令和3年度施政方針

2020年02月09日掲載

令和3年度の施政方針を掲載しています。

1 はじめに

 令和3年度の一般会計予算をはじめとする予算関係議案の御審議をお願いするに当たりまして、私の市政運営の基本的姿勢と重点施策を申し上げます。

 昨年は、新型コロナウイルスに始まり、新型コロナウイルスで終わった1年でした。
 今年に入っても、11都府県に緊急事態宣言が発出されるなど、大変厳しい状況が続いています。
 今この時間も、目の前の患者さんたちと向き合っている医療従事者の皆様、PCR検査等で多大なご協力をいただいている富士宮市医師会様に対しまして、改めて敬意を表するとともに厚く御礼申し上げます。
 さらに、市民の皆様には、感染拡大の防止のため、様々なご協力をいただいておりますことにつきましても、感謝申し上げます。
 このような中、いよいよ新型コロナウイルス感染症対策の決め手と期待されるワクチン接種が始まります。本市におきましても、庁内横断型のプロジェクトチームを設置し、準備に入っているところであります。
 一日も早く、市民の皆様が安心して生活できる日が来るよう、最善の努力をしたいと考えております。
 さて、令和3年度は、第5次富士宮市総合計画後期基本計画の策定の年となります。
 第5次富士宮市総合計画も折り返し地点を迎えることから、これまでの施策の検証、そして更なる政策推進に向けた事業展開を図っていかなければならないと考えております。
 ウイズコロナと言われる中で、第5次富士宮市総合計画に掲げた将来都市像「富士山の恵みを活かした元気に輝く国際文化都市」の実現、また、市民の幸せと、それを次の世代に確実に継承していく責任を果たすため、強い決意を持って持続可能なまちづくりに挑戦してまいります。

2 市政運営の基本的姿勢

 我が国は、新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで経験したことのない国難ともいえる事態に直面し、様々な分野の経済活動に甚大な影響が生じております。
 また、景気動向につきましても、依然として厳しい状況にあります。
 先行きについては、感染拡大の防止策を講じつつ、社会・経済活動のレベルを段階的に引き上げていく各種政策の効果や、海外における経済の改善もあって、持ち直しの動きが期待されておりますが、一方で、未だ感染拡大が収まらない状況が国内外の経済を下振れさせるリスクや、金融資本市場の変動等による景気への影響も懸念されるところであります。
 国においては、休業者や離職者をはじめとする国民の雇用を守ることを最優先とする中で、貨幣の流通が衰退し、経済全体が収縮していくデフレには決して戻さないとの強い決意を持って経済・財政運営を行い、併せて、デジタル化の推進など、新たな日常の実現に向けた動きを加速するとしています。
 菅政権下で初めての予算編成となる令和3 年度予算では、「国内外の感染症の状況や経済の動向、国民生活への影響を注意深く見極めつつ、経済・財政一体改革を推進する」としていることから、地方の財政運営に及ぼす今後の影響には、十分に注視する必要があります。
 なお、本市における経済の動向については、市内に所在する大手企業「八社会」の皆様からのご意見ですが、新型コロナウイルス感染症の影響については、発生当初、大変厳しい状況にあると懸念されたが、企業努力やその後の世界市場の持ち直し傾向により、現在は回復基調にあるとのお話も伺っております。

 それでは、令和3年度の本市の市政運営の基本的姿勢について申し上げます。
 まずは、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
 本市では、これまで新型コロナウイルスの感染拡大防止と市民の生活を守るため、様々な緊急対応策を講じてまいりました。
 令和3年度も、感染症の収束に目途が立つまでは、市民の命と生活を守ることを第一に、柔軟かつスピード感を持って、コロナ禍の危機を乗り越えていく対策を実施してまいります。
 予算につきましても、国や県の交付金の動向を見極めつつ、飲食等事業者事業継続応援給付金やプレミアム付き商品券発行など、切れ目ない施策が必要なものは、国で言う15か月予算のように、令和3年2月補正予算で繰越明許による関連予算を提案するなどの対応を図ってまいります。
 また、令和3年度当初予算においては、ワクチン接種費用をはじめ、富士宮方式と言われるPCR検査や無症状者に対するPCR検査費用の補助、さらには、経済変動対策貸付資金を利用する中小企業等への利子補給、需要が大幅に落ち込んだ観光分野に対する支援に係る予算などを盛り込みました。
 なお、日々の生活に困っている方々に対しましては、仕事や住居を失うケースもあることから、生活福祉資金の特例貸付や住居確保に対する給付など、国や社会福祉協議会と連携した支援を行ってまいります。

 そのほか、令和3年度からは、債務負担行為の積極的な活用により、市発注の公共工事を年度の早い時期から執行することを可能とする「建設工事における施工時期の平準化」にも取り組んでまいります。
 通常、国や地方公共団体の各会計年度における予算は、その年度の歳入をもって、当該年度の歳出に充てるという「会計年度独立の原則」があります。
 しかしながら、「建設工事における施工時期の平準化」は、受注者である民間事業者にとって、年間における安定した受注機会を得ることができ、さらに繁忙期が平準化されることで労働者の休日の確保などの処遇改善にも繋がるメリットがあります。
 一方、発注者である自治体にとっても、昨今増えてきている入札不調へのリスクを減らすことができるなど、大いに意義のある取組でございます。
 今後の市政運営につきましても、これらの事業執行の適正な時期を見極めての予算対応などのように、柔軟かつ迅速に、常に大所高所から見て考えるという姿勢で、第5次富士宮市総合計画の将来都市像の実現に向けた取組を進めたいと思います。

 第5次富士宮市総合計画では、将来都市像にふさわしい魅力あふれるまちづくりを進めるために、総力を挙げて取り組む必要があるテーマを、「3つの重点取組」として掲げております。
 それでは、令和3年度における「3つの重点取組」について、具体的に申し上げます。

 取組1 は、「恵み豊かな未来づくり」世界遺産のまちづくりであります。
 静岡県富士山世界遺産センター、富士山本宮浅間大社周辺を中心とした中心市街地及び各構成資産の整備、新型コロナウイルスの収束を見据えた新たなスタイルによる観光誘客の促進、富士山の景観や歴史・文化の継承など、引き続き、進めてまいります。
 特に、富士山の湧水を源泉とする神田川が繋ぐ静岡県富士山世界遺産センターから富士山本宮浅間大社周辺につきましては、世界遺産富士山の表玄関にふさわしい「清流の美」、「空間の美」、「庭園の美」をコンセプトとした、誰もが羨む他都市には真似のできない庭園都市の整備を着実に進めてまいります。
 また、白糸ノ滝周辺については、県道富士富士宮線のラウンドアバウト周辺を整備するとともに、音止の滝と富士山の眺望を生かし、自然環境にも配慮した魅力的な空間整備に向けた準備に取り掛かります。
 さらに、10月には、世界遺産所在自治体の首長等をお迎えし、世界遺産の保全や観光面における活用等について意見交換を行うとともに、地域間の連携を深めることを目的とした世界遺産サミットを、本市で開催いたします。
 観光については、本市の地域資源である自然や歴史・文化という強みを生かした取組を模索していきたいと考えておりま
す。
 具体的には、まちなかエリアの人の流れを芝川地域へも広げる取組として、E-BIKE(高性能電動アシスト付き自転車)の貸出拠点の増設と富士山の持つ魅力を体感できるエコツーリズムやカルチャーツーリズムをクローズアップした新しい観光施策の研究にも着手してまいります。
 国際化の取組については、新型コロナウイルス感染症の懸念はありますが、中学生の英語圏派遣事業等の海外への渡航の可能性を探りつつ、渡航ができない場合もオンラインなど、多様な手法による交流を行ってまいります。

 取組2 は、「いきいき元気な未来づくり」安全・安心なまちづくりであります。
 東日本大震災、静岡県東部の地震の発生から10年が経過する中、市民の生命と財産を守るため、多様な災害に対する迅速な対応を改めて強化いたします。
 また、市立病院を核とする地域医療体制の確保と充実、地域コミュニティへの支援強化などに、引き続き、力を注いでまいります。
 地域コミュニティへの支援については、本年4月に、富丘交流センターと白糸会館が開館します。また、富士根地区の交流センター整備につきましても、事業用地取得及び設計を行い、続けて造成工事に着手してまいります。
 公共交通に関しては、運転に不安のある高齢者が運転免許証を自主返納する動機づけとなるよう、高齢者運転免許証返納補助制度を拡充し、高齢者による交通事故の減少に繋げます。
 また、宮タクについては、利用環境の改善に向けた実証実験を行うなど、更なる利便性向上に努めます。
 市民サービスの向上に繋がる取組については、行政のデジタル化を推進します。電算統計課の課名をデジタル推進課に改称し、デジタル化推進を掲げた第6次情報化計画を策定するとともに、専任職員の配置や総務省への職員の派遣を行います。

 取組3 は、「誰もが輝く未来づくり」人口減少を克服するまちづくりであります。
 富士宮市の未来を担う人材を豊かにするため、出会いから結婚・妊娠・出産・子育てまでを切れ目なく支援していくことに、これまで以上に力を入れてまいります。
 出会いについては、県とも連携し、出会いの場の機会を増やしていくとともに、結婚への後押しとして、結婚新生活に掛かる費用の助成を始めます。
 妊娠や出産については、妊娠・出産・子育てシェアサポート事業の充実や、不妊・不育治療への助成を国の制度も活用しながら継続します。
 子育て支援については、子育てに不安や負担感を抱える保護者を支援するため、家事・育児等のサポート及び相談・助言・指導を行う子育て応援ヘルパー等の派遣を新たに開始します。
 さらに、児童の「居場所・遊び場」の拠点施設として、令和4年春の開館を目指し、地域子育て支援センターも併設した(仮称)富士宮市立児童館の建設を進めます。
 女性の力が発揮できる環境づくりについては、ふじのみやベビーステーション事業の更なる展開を図っていくなど、引き続き、事業者等と連携してまいります。
 中小企業等への支援策としましては、経営・知財・創業など様々な分野への支援について、組織連携による多面的な総合相談窓口で対応する「ビジネスコネクトふじのみや」を、富士宮商工会議所、芝川商工会、富士宮信用金庫と連携して開始します。
 企業誘致への取組としては、サテライトオフィスなどの誘致を強化します。
 移住・定住に向けた取組としては、まずは関係人口の創出に向けて、ふるさと納税寄附者やキャンプ客などを対象に、首都圏シティセールス推進と連携して、豊かな自然を生かしたワーケーションやまちの魅力を効果的に発信します。
 また、新たな働き方に対応したスタイルとして、テレワーク移住の体験に対する支援を行います。

 私が、常々口にしております「住んでよし 訪れてよし」、「生んでよし 育ててよし」、「学んでよし 働いてよし」、「出会ってよし 結ばれてよし」という、4つのまちづくりの合言葉があります。
 令和3年度も、この合言葉のもと、市民の皆様の幸せを願い、全力で取り組んでまいります。
 それでは、以下、第5次富士宮市総合計画の7つの基本目標に沿って、令和3年度重点施策の大要を申し上げます。

3 令和3年度重点施策

最初に、(1) 富士山の自然と調和した循環力があるまちづくり(環境)について申し上げます。
地球環境保全の総合的かつ計画的な推進については、世界遺産富士山のまち富士宮市として、富士山SDGsのもと、地球環境を守り、脱炭素社会の実現に貢献することを第2次富士宮市環境基本計画等に位置付けます。また、地域循環共生圏づくり事業、小水力発電の導入支援等を通して、市民や事業者とともに「オール富士宮」で、地球環境保全に取り組む機運の醸成を図ります。
 エネルギー施策については、再生可能エネルギーの導入促進や災害時の停電対策として、家庭における電力の自給自足を推進するため、引き続き、創エネ蓄エネ機器等設置補助を実施します。
 循環型社会の形成及びごみ処理対策としては、一般廃棄物処理基本計画を策定するとともに、ごみ減量化や雑がみの分別回収、食品ロス削減など、市民、事業者、行政が一丸となって「ごみダイエットプロジェクト」に継続して取り組みます。
 また、世界遺産富士山にふさわしい美しいまちを目指すため、富士山麓環境パトロール隊によるパトロール等を行い、不法投棄撲滅のための啓発を行います。
 上水道事業では、老朽管の布設替え及び主要水道施設の耐震化工事を計画的に実施するとともに、新たな水源開発による経営変更認可も見据える中で、引き続き、水の安定供給に努めます。
 下水道事業については、汚水処理施設整備計画による整備の推進、ストックマネジメント計画に基づく施設の修繕や老朽化対策を行い、将来にわたって安定的な事業継続を図ります。

 次に、(2) 富士山の麓から創造力と活力がみなぎるまちづくり(産業)であります。
 農林水産業の振興については、担い手の育成に努めるとともに、国からの森林環境譲与税なども活用し、森林の整備をさらに進めます。
 また、食のまちづくりの取組として、第1回フードバレーサミットを本市で開催します。
 企業誘致・留置については、地域産業の活性化や雇用の場を確保するため、優良企業の新規進出や事業拡大を継続して支援してまいります。
 また、中小企業振興施策として、中小企業実態調査を実施します。
 住宅リフォーム宮クーポン事業については、子育て世帯の支援や三世代同居を促進するメニューを備えて、継続して実施します。
 UIJターンへの取組については、進学や就職を控える高校生が、改めて地域の産業や歴史を見直し、自ら将来の選択の幅を広げ、地域の課題に触れる契機として活用できる企業紹介ガイドブックを作成し、郷土意識の高い、地域に根ざした人材の育成を図ります。
 観光施策については、ちょこっと旅する富士宮プレゼントキャンペーンやプレミアム付き観光クーポンの発行に対する補助など、コロナ禍における観光誘客を、引き続き、実施します。
 また、令和4年1月からは、NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まります。
 本市には、源平合戦から鎌倉幕府の体制確立までのゆかりの地が多く残っております。このゆかりの地を多くの方に知っていただき、歴史・文化の継承と地域振興に繋げていくため、PR冊子の作成のほか、SNSやユーチューブなども活用して、世界に向けて大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と本市の繋がりを発信してまいります。
 なお、放映が終了してからの地域振興も重要であることから、庁内横断的な組織づくりも進めてまいります。
 そのほか、観光基盤整備については、休業していた新稲子川温泉ユー・トリオを6月にリニューアルオープンします。
 さらに、田貫湖キャンプ場北サイトにある湖畔荘跡地を、富士山と湖畔の眺望を楽しめる園地・休憩地として整備するほか、道の駅朝霧高原につきましても、施設改修に向けた設計に着手いたします。

 次に、(3) みんなの幸せと潤いを創出するまちづくり(健康福祉)であります。
 新型コロナウイルス感染症対策については、発熱等の新型コロナウイルス感染症が疑われる症状がある患者が、市内かかりつけ医の判断により検査を受けられるPCR検査場を、引き続き、運営します。また、感染が懸念される無症状者を対象としたPCR検査への補助についても継続します。
 子育て施策に関しては、民間の地域子育て支援センター改築への補助を行うとともに、放課後児童クラブへの支援を継続します。
 子育て世代包括支援センターについては、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を継続して実施します。
 健康づくりについては、胃がん検診の二重読影体制等がんの予防と早期発見に向けて、医師会と連携し、健康診査の精度の更なる向上を図ります。
 地域医療に対する取組については、救急医療センターにおける休日・夜間の初期救急医療体制の維持強化を図るほか、二次救急医療機関の医療機器整備に対する助成を行います。
 地域福祉に対する取組については、地域のネットワークづくりと地域を担う人づくりに努めるとともに、産・官・学・民との協働による地域福祉活動の推進を図ります。
 高齢者福祉については、第二層生活支援コーディネータと協議体の活動を推し進め、地域で「助け合い」、「支え合い」のできる取組を継続するとともに、養護老人ホーム長生園の談話スペースにエアコンを設置し、入所者の健康を確保します。
 障がい者福祉に対する取組については、障がいのある方が地域で安心して生活できるように、各種サービスの充実と質の向上に努めます。

 次に、(4) 郷土に学び郷土を愛する心豊かな人を育むまちづくり(教育文化)であります。
 学校教育の充実については、「富士山を心に、夢をもって生きる子ども」の育成を目指して、確かな学力、徳のある人間性、たくましい体の調和の取れた子供の育成に努めてまいります。「一人一人の子供は、かけがえのない存在である」という考えを根底に置き、教育は、「子どもたちにとって明るい未来を実現するための営み」として捉え、学校教育の充実を図ります。
 教育分野におけるICT利活用推進については、GIGAスクール構想による一人1台端末の導入によって期待できる「個別最適な学び」と、これまで取り組んできた「協働的な学び」の実現を図ります。また、プログラミング教育において、論理的思考力を身に付ける学習に取り組み、情報活用能力を高めていきます。
 さらに、富士山学習や各教科等で進めてきた持続可能な社会の担い手を育む教育(ESD)を推進します。
 自立した一人の人間として、人生を他者とともにより良く生きる人格を形成することを目指し、特別の教科「道徳」を核として、学校の教育活動全体で子供たちの心を育ててまいります。
 いじめについては、「富士宮市いじめ防止基本方針」に従い、未然防止、早期発見・早期対応、当事者の立場に立った対応に努めてまいります。
 不登校については、個に寄り添うことを基本に、その当事者の立場に立った対応を進めます。
 また、教員の働き方改革の一環として、校務支援システムを導入します。
 義務教育における施設の整備については、児童生徒の安全・安心な教育環境の確保のため、引き続き、校舎等の耐震補強を実施します。また、芝川中学校については、校舎改築に向けた実施設計に着手するとともに、東小学校管理教室棟及び富士見小学校屋内運動場の耐力度調査を実施します。
 さらに、学校施設の営繕事業として、良好な教育環境の確保及び長寿命化を図るため、校舎やトイレなど、営繕工事を効率的かつ計画的に実施します。
 社会教育については、公民館・地域学習センターにおいて、それぞれの地域性や施設の特徴を生かしながら、新しい生活様式に沿った情報コンテンツを活用した事業を実施します。
 青少年の健全育成については、青少年相談センターにおいて、近年増加傾向にある不登校やひきこもり、ニート等の相談に応じるため、電話・面接相談や適応指導教室、夜間開設、ICT環境の整備などによる教育相談の充実、伴走型支援や関係機関との連携などによる指導体制の強化を図ります。
 図書館運営については、中央図書館長寿命化工事に着手するほか、西富士図書館では、視聴覚ライブラリーのモニターや再生機器等を更新します。
 さらに、本年4月に開館する富丘交流センターにおいて、新たな図書館サービス提供拠点の供用を開始します。
 文化財については、国指定史跡「富士山」の各指定文化財に対して、本質的な価値の保護を図り、史跡を活用した地域振興に繋げるため、引き続き、それぞれの整備、活用を進めます。
 さらに、史跡「大鹿窪遺跡」についても、整備を継続します。
 本市の歴史、民俗等を次世代に継承し、市民の教養の向上に寄与することを目的とした(仮称)富士宮市立郷土史博物館については、継続して基本構想の策定に取り組みます。
 市史編さんについては、市制施行80周年を迎える令和4年度の第1巻の刊行を目指し、各分野の資料調査を進めるとともに、執筆に取り掛かります。
 開館から40年を迎える市民文化会館については、利用者の安全性を確保しつつ利便性の向上を図るため、耐震補強工事、長寿命化工事とともに、設備等の更新及び機能向上を目的とした環境改善工事を合わせて行うリニューアル事業として、耐震補強計画及びリニューアル実施設計に着手します。
 令和3年度に延期となった東京2020オリンピック・パラリンピックに関しては、スペイン空手ナショナルチームのホストタウンとして空手選手団の直前キャンプを受け入れることから、新型コロナウイルス感染防止に万全の対策を施して安全な直前キャンプを実施し、選手団の活躍の後押しとオリンピックへの機運醸成、市民がスポーツに関心を持つ機会に繋げます。
 体育施設整備については、山宮ふじざくら球技場が様々な競技において利用が多く、また、ナイター設備もあることから、多目的の人工芝グラウンド化改修に向けて設計に着手します。

 次に、(5) 富士山の魅力を発揮した快適なまちづくり(都市整備)であります。
 市街地整備については、景観やバリアフリーに配慮した富士宮駅前広場等施設の整備に向けて、基本設計に着手します。
 街路整備に関しては、都市計画道路田中青木線について都市計画法の事業認可を受けたことから、用地調査等を実施します。
 岳南北部地区幹線道路整備事業では、慈眼寺沢周辺の工事を進めるとともに、引き続き、事業用地取得の交渉を実施します。
 県道清水富士宮線及び県道白糸富士宮線の整備については、県等の関係機関へ強く要望し、一日も早い完成を目指してまいります。また、国道469号の整備促進についても、国道に隣接する市町と連携して、国・県等の関係機関へ強く要望してまいります。
 道路橋りょうの安全確保については、計画的、予防的な対応を実施してまいります。
 良好な景観の形成に関しては、無電柱化推進計画の推進区間の事業化に向け、事前調査及び関係機関との調整を行います。
 市街地治水対策では、老朽化した水門の計画的な更新を開始します。
 都市公園に関しては、誰もが安全・安心に利用できる園路や老朽化した公園施設の整備を進めるとともに、魅力ある公園づくりに向けて遊具の更新を進めます。
 美しい花いっぱいの町づくり事業については、地域の花壇づくりへの支援を継続するとともに、多くの方が訪れる静岡県富士山世界遺産センター周辺や商店街地区において、花いっぱいによる演出と潤いと安らぎの空間づくりを、引き続き、実施します。
 また、小田貫湿原の湿原環境を保全していくため、植物及び地質・水象調査を行い、今後の湿原乾燥化防止対策について検討を進めてまいります。

 次に、(6) 豊かなコミュニティを持つ安全・安心なまちづくり(市民生活)であります。
 防災に対する取組については、大規模地震に起因する「電気火災」の発生を抑制する感震ブレーカーの設置に対する補助を継続します。また、建築物の耐震化対策として、県と連携して耐震補強工事などへの助成を行うTOUKAI-0事業を推進します。
 消防については、消防施設の改修や車両の更新を進め、消防力の充実強化を図ります。
 防犯体制の強化としましては、近年、子どもや女性などを狙う凶悪犯罪が多発していることから、引き続き、子どもを守るための小学校への防犯カメラ設置を進めます。
 また、通学路に防犯カメラを設置する自治会に対する補助金の交付を実施し、地域の防犯意識向上や犯罪の抑止に繋げます。
 平和への取組としては、被爆地である広島市への中学生派遣を実施し、派遣報告会等を通して、多くの市民に向けて核兵器廃絶及び世界の恒久平和への意識啓発を図ります。
 住宅・住環境への取組については、市営万野住宅Ⅾ棟の建設工事に着手します。また、長寿命化工事として、市営粟倉住宅の屋根・外壁改修工事を実施します。
 さらに、特定空き家等に対する対策として、除却に対する助成を開始します。

 最後に、(7) 市民と一緒に取り組むまちづくり(市民参加・行財政)であります。
 まずは、地方創生についてであります。
 男女の出会いや交流の場を創出することを目的として、民間事業者と連携し、若者の結婚に向けた前向きな機運の醸成を図るためのセミナーやイベント等を引き続き開催します。
 女性の活躍推進については、企業や地域で活躍する方々で構成された女性応援会議で広く意見を聴き、地域の実情に即した女性活躍応援施策を継続します。
 さらに、仕事と家庭生活の両立の推進を図るための講演会やセミナー等を開催し、機運の醸成と啓発促進、自身のスキルアップに繋
げます。
 ふじのみや寄附金の取組では、官民連携による地域課題の解決と地方創生のより一層の推進に向けて、企業版ふるさと納税制度の積極的な活用を図ります。
 男女共同参画の取組として、LGBTQIA(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クエスチョニング・インターセックス・アセクシュアル)をはじめとする性的マイノリティやジェンダーに関する啓発を行います。
 公共建築物の長寿命化については、公共施設の安全性におけるリスクを最小限に抑え、かつ、工事費の平準化を図るため、公共建築物長寿命化計画の実施計画である短期保全計画を取りまとめるとともに、施設分類ごとの個別施設計画を策定し、公共施設の長寿命化工事を計画的かつ効率的に実施します。
 総合的かつ計画的な土地利用の推進については、令和2年度策定の富士宮市工業振興ビジョンに基づき、地区計画適用の基本的な方針(工業系)を定めます。
 これにより、市街化調整区域において、基本方針に沿った新たな工業団地の立地が可能となることから、富士宮商工会議所、芝川商工会及び金融機関等と連携して、民間活力による工業団地の造成・分譲による新規企業の進出、市街地の既存企業の移転・拡張など、積極的な企業誘致・留置の推進、並びに市内中小企業の事業拡大等の支援に繋げてまいります。
 また、第一種低層住居専用地域において、岳南広域都市計画区域を構成する富士市と同様な建ぺい率、容積率への緩和の可能性を検討するため、現況の土地利用や建物の状況の調査を実施します。
 さらに、指定大規模既存集落制度や優良田園住宅制度の活用を促進するため、市街化調整区域における地域課題の整理と地域づくりモデル地区の選定に着手します。
 広聴広報については、SNSアプリで国内最大のユーザー数を持つLINEを用いて、より効果的に情報を発信するとともに、相互通信機能を利用し、個別相談、アンケート調査等に活用していきます。
 併せて、道路や公園等の破損個所の把握、災害時の被害状況の情報収集等への活用についても、検討を進めてまいります。
 税や使用料などの収納方法の拡充については、市税と水道料金にスマートフォン決済アプリによる収納を加え、新型コロナウイルスの感染拡大防止にも対応した市民サービスの向上を図ります。
 最後に、財政運営についてであります。
 本市では、これまで財政規律を守りつつ、将来の行政需要も見据えた財政収支見通しを立て、積極性と健全性が両立するメリハリのある財政運営に取り組んでまいりました。
 その結果、財政の健全性を示す指標は、適正な数値が維持できております。
 今般の新型コロナウイルス感染症緊急対策に係る事業の実施においては、財政調整基金をその財源の一部として活用し、機動的で迅速な対応を行ったことから、財政調整基金の残高は一時的に大きく減少しましたが、令和元年度決算剰余金からの新規積立てや地方創生臨時交付金の活用により、概ね年度当初の水準まで積み戻しております。
 昨今、全国の多くの自治体では、義務的経費である公債費や扶助費、繰出金などの経常的経費が年々増加し、財政構造の弾力性が失われつつあることが大きな課題となっております。
 また、今後は、コロナ禍における経済活動の停滞や個人消費の冷え込みにより、市税のみならず地方消費税交付金などの更なる減少も想定されます。
 しかしながら、本市では、これまで良好な財政状況を基盤として、緊急性の高い課題にも迅速かつ的確に対応してきたことから、直ちに社会経済や行政需要への対応能力が失われることはありませんが、引き続き、中長期的な視点をもって、持続可能な財政運営に心掛けてまいります。
 令和3年度は、第5次富士宮市総合計画の6年目となり、前期基本計画の仕上げの年となります。
 同時に、令和4年度からの後期基本計画に円滑にバトンパスできるよう、新型コロナウイルス感染拡大防止の視点を十分勘案しつつ、改めて、時代の要請を踏まえた事業の選択と集中が求められる年でもあります。
 本市にとっても、急速な少子高齢化の進展や人口減少への対応、公共施設等の老朽化対策など、大きな課題が山積しておりますので、今後とも財政の健全性に配慮しつつ、財政調整基金をはじめとする各種基金を有効に活用し、本市の目指す将来都市像を実現するための施策を、さらに強力に推し進めてまいります。
 併せて、職員一人一人が、コロナ禍にあって激変する社会経済情勢をしっかり捉え、第5次富士宮市総合計画に基づく3つの重点取組及び7つの基本目標に沿って事業執行に取り組むものとします。

4 おわりに

 地球温暖化への警鐘が発せられてから、長い時間が過ぎました。この間、国際社会においては、パリ協定等による様々な取り組みがなされておりますが、未だ改善の兆しは見えず、近年における異常気象など地球温暖化の進行は、益々加速しております。
 また、新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで当たり前であったことが制限されたり、考え方を変えざるを得ない状況にあります。
 そんな中、本年1月13日、本市は「ゼロカーボンシティ」を表明し、2050年までに市内の二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すことを宣言いたしました。
 昨年秋、湧玉池がライトアップされ、周辺の木々が静かな水面に幻想的に映る上池に、静寂な時間の中でも滾々と水が湧いているのを目にしました。
 私は、そこに大地の揺るぎない静かな力を感じました。
 「つかふべき 数にをとらむ 浅間なる 御手洗川のそこにわく玉」
 この歌の作者は、三十六歌仙の一人、平兼盛で、平安時代中期の作品と言われています。
 湧玉池に、富士山からの恵みである綺麗な水が滾々と湧いている様子を表現しています。
 富士山は、遠き古き時代も、そして今も、この地に住む者に恵みと力を与えてくれていることに思いを馳せました。
 今、私たちは、地球温暖化、そして新型コロナウイルス感染症という100年に一度の世界規模の流行、すなわちパンデミックの恐怖にさらされています。
 しかし、私たちは、雄大な富士山を日常の中で仰ぎ見る環境にいます。そして、富士山が私たちの暮らしの盾となり、温暖な気候、自然を創出してくれています。
 私たちは、日本一贅沢で幸せな場所に住まわせてもらっているのではないでしょうか。
 私は、そんなふうに思います。
 そして、この幸せをもたらしてくれる富士山を、私たちが確実に次の世代に引き継がなくてはならない責任も、強く感じております。
 富士宮市が提唱する「富士山SDGs」は、子供たちにも着実に浸透をしてきています。SDGsの学びの中に見る次代を担う子供たちの真剣な眼差しに、大きな期待も感じます。
 本年は、干支で言えば辛丑の年であります。
 辛丑が表す意味は、新しく生まれ変わろうとする春の時期を待っている時と言われています。
 郷土の偉人で、現在の富士宮北高等学校の敷地と校舎などを寄贈された望月軍四郎先生のお宅の居間に、「仁は禍を除く」と書かれた扁額があることを、以前、広報ふじのみやに掲載しました。
 この言葉は、優しさや思いやりを持つことは、禍が除かれるという意味で、とても良い言葉だと思いました。
 コロナ禍を克服し、訪れる新たな時代が本市にとって輝きあふれるものとなるためには、市民の心が優しさと思いやりであふれ、さらに、市民一人一人が共に考え、助け合い、支え合う地域づくりを目指さなければならないと思います。
 このような思いを胸に、私は、富士山のあるまちの市長として、更なる市政発展のため、市政運営に専心してまいります。
 終わりに、市民の皆様、そして議員各位の御理解と御支援をお願い申し上げ、令和3年度の施政方針といたします。

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